会社を譲渡したり、後継者に引き継いだりする際に、思わぬところで手続きが止まることがあります。その一つが、株主の状況が整理されていないことです。
創業から年数が経った会社では、次のようなことが珍しくありません。
- 設立の際に、知人や親族の名前を借りて株主になってもらった
- 相続によって、株式が複数の親族に分かれた
- 元役員や元従業員が、株式を持ったまま退職した
- 株主の一部と、連絡が取れなくなっている
なぜ整理が必要なのか
株式譲渡では、買い手は通常、会社の株式をすべて、または議決権の大部分を取得することを望みます。株主が分かれていると、その全員と交渉し、同意を得る必要があります。
また、株主の範囲がはっきりしないと、譲渡の後に「自分も株主だった」と主張される心配が残ります。買い手のデューデリジェンスでも、株主の状況は重点的に確かめられます。
株主の状況を整理する手順
- 名簿の照合株主名簿と実際の株主・持株数が一致しているかを確かめます
- 名義株実際の持ち主を確認する書面を交わし、名義を移すのが一般的です
- 所在不明株主会社法の手続きや特例を使って整理できる場合があります
- 少数株主少数の株主が多い場合は、経営者や会社が買い取って集約します
※ 法的な手続きは、弁護士・司法書士とあわせてご確認ください
① 株主名簿と、実際の株主を照らし合わせる
まず、株主名簿、設立の際の書類、増資や株式の譲渡の記録、法人税の申告書の別表(株主の状況)を並べ、株主と持株数が一致しているかを確かめます。
株主名簿が作られていない、あるいは長く更新されていない会社も少なくありません。過去の記録をたどって、名簿を整えることから始めます。
② 名義株を整理する
名義株とは、株主名簿上の株主と、実際に出資した人(本当の持ち主)が異なる株式です。設立の際に、発起人の人数をそろえるために名前を借りたケースがよく見られます。
整理の方法としては、名義を貸した方(またはその相続人)に事情を説明し、実際の持ち主が経営者であることを確認する書面を交わしたうえで、名義を移すのが一般的です。名義を貸した方が亡くなっている場合は、相続人の方と話し合う必要があり、時間がかかることがあります。
③ 連絡の取れない株主(所在不明株主)
株主に送った通知が届かない状態が続いている場合、会社法には、その株主の株式を売却などで整理する手続きがあります。
- 株主への通知が5年以上継続して届かず、継続して5年間、配当も受け取られていない場合に、会社がその株式を競売し、または裁判所の許可などを得て売却し、代金をその株主に交付する仕組みです。
さらに、中小企業の事業承継のために、一定の要件を満たして認定を受けた会社は、この5年の期間を1年に短縮できる特例が設けられています(経営承継円滑化法。認定の窓口は都道府県です)。
手続きには、公告や裁判所への申し立てなどが必要です。弁護士・司法書士と相談しながら進めます。
所在不明株主の株式を整理できる期間
- 会社法の手続き通知が5年以上継続して届かず、配当も受け取られていない場合などに、競売・売却できます
- 特例経営承継円滑化法の認定を受けた会社は、この期間を1年に短縮できます
※ 個別の扱いは、弁護士・司法書士などの専門家にご確認ください
④ 少数の株主から、株式を買い取る
連絡は取れるものの、少しずつ株式を持っている株主が多い場合は、経営者や会社が株式を買い取って集約します。話し合いがまとまらない場合の方法については、「少数株主から株式を買い取るには」で整理しています。
これから分散させないために
相続によって株式が再び分散するのを防ぐため、株式に譲渡制限を設けている会社では、定款に「相続などで株式を取得した方に対して、会社が売渡しを請求できる」という定めを置くこともできます。導入には株主総会の特別決議が必要で、運用には注意点もあるため、専門家と相談して検討します。
進め方のご提案
株主の整理には、時間がかかることが多くあります。譲渡や承継を具体的に考える前の段階から、株主名簿の確認だけでも始めておくことをお勧めします。
当社では、株主の状況の整理から、譲渡の進め方までご相談をお受けしています。法的な手続きは、弁護士・司法書士とあわせて確認されることをお勧めします。お問い合わせよりご相談ください。
