M&Aの価格は、交渉だけで決まるものではありません。交渉のテーブルに着く前に、勝負の大半はついています。
1年の時間があれば何ができるのか、優先順位の高い順に整理します。
1. 管理体制を整える
費用対効果の高い施策です。
月次決算を翌月15日までに締めます。これができている中小企業は多くありません。数字が遅れる会社は、買い手から「経営管理ができていない」と見られます。デューデリジェンスの対応もスムーズになり、交渉全体が早く進みます。
部門別・製品別の損益を把握します。どの事業が利益を生んでいるかが分からないと、買い手は事業計画を評価できません。
在庫と債権の実態を合わせます。滞留在庫や回収不能債権が簿価のまま残っていると、デューデリジェンスで指摘されることが多くあります。事前に整理しておけば、減額交渉の材料になりません。
2. オーナー依存を減らす
買い手が特に懸念する点です。
- 売上がオーナーの人脈に依存していないか
- 技術的・実務的な判断をオーナーしかできない状態になっていないか
- 取引先がオーナー個人との関係で取引を続けていないか
これらは1年で完全には解消できませんが、着手しているかどうかで印象が変わります。後継的な立場の人材を育て、実際に権限を移していく過程を示せることに意味があります。
3. 取引先の集中度を下げる
1社への売上依存度が高いと、その取引が失われた場合に事業の継続が難しくなるおそれがあります。
新規顧客の開拓には時間がかかりますが、依存度が下がる方向に動いているという事実があれば、評価は変わります。
4. 不要な資産を切り離す
事業に関係のない不動産、社長個人の車両、役員への貸付金。これらが会社に残っていると、譲渡価格が膨らみ、買い手の検討ハードルが上がります。
会社分割で本業だけを切り出す方法もありますが、債権者保護手続や許認可の承継確認に時間がかかるため、早い段階での検討が必要です。
5. 契約と労務を整える
主要取引先との契約書、就業規則、賃金規程、勤怠記録。デューデリジェンスで重点的に確認される項目です。
未払残業代は、減額交渉の材料になりやすい項目です。管理監督者の範囲、みなし残業代の設計を、この機会に見直しておくべきです。
効果の目安
営業利益が5,000万円の会社で、年買法(時価純資産+営業利益の3年分)を前提とした場合を考えます。
管理体制の整備と不要資産の切り離しによって、営業利益が1,000万円改善し、営業権の評価が3年分から4年分に上がったとします。営業権部分だけで1億5,000万円が2億4,000万円になります。
もちろん単純な計算ではありませんが、1年の準備がどれだけの差を生むかの目安にはなります。
1年の準備による、営業権の評価の目安
- 準備の前営業利益5,000万円 × 3年分 = 1億5,000万円
- 準備の後(仮定)営業利益6,000万円(1,000万円の改善)× 4年分 = 2億4,000万円
年買法(時価純資産+営業利益の3年分)を前提に、改善と年数の上昇を仮に置いた例です。単純な計算ではありませんが、差の目安になります
当社での支援
当社はバリューアップ支援を担っており、M&Aの前段階から関与できます。この部分はFA・コンサルティング業務として、着手金と月額報酬をいただく形です。
「売れる状態に整えてから判断する」という進め方も、選択肢としてご検討ください。
