更新  経営の視点

「統治」と「執行」を分ける。グループ経営における委任の設計

買収した会社の経営をどこまで任せるか。20社超の子会社を管理した経験から、委任の設計について整理しました。

執筆 

この記事の要点

  • 全部任せても、全部管理しても、うまくいきません
  • 数字とルールは本社が握り、事業の進め方は現地に委ねます
  • 委任には、判断基準を共有しておくことが前提になります

会社を買収した後、その会社の経営をどこまで任せるか。

全部任せると統制が効かず、全部管理すると現場が動かなくなります。この加減の設計が、グループ経営の中心的な論点です。

任せすぎた場合に起きること

「現場のことは現場が一番分かっている」という考えは、一面では正しいものです。

しかし、数字の報告が遅れ、問題の発覚が遅れ、気づいたときには手遅れという事態が起こります。本社が状況を把握していなければ、支援もできません。

任せることと、放置することは違います。

管理しすぎた場合に起きること

一方、些細な決裁まで本社を通す形にすると、現場の意思決定が止まります。

買収された側から見れば、「以前は自分たちで決められたことが決められなくなった」という体験になります。優秀な人ほど、この状態を嫌います。

結果として、キーパーソンが離れていきます。

分けて考える

私は譲渡先グループで20社を超える子会社を見てきましたが、そこで整理したのは次の区分です。

本社が握るもの(統治)

  • 月次の数字とその報告ルール
  • 一定金額以上の投資判断
  • 人事(役員の選任)
  • 資金の調達と配分
  • コンプライアンスの基準

現地に委ねるもの(執行)

  • 事業の進め方、日常の意思決定
  • 取引先との関係構築
  • 現場の人員配置
  • 価格設定や商品の企画

数字とルールは本社が握り、事業の進め方は現地に委ねます。この区分が、実務上は機能しました。

委任の前提は、判断基準の共有

ただし、単に権限を渡せばよいわけではありません。

何を大切にして判断するのかが共有されていないと、任せた結果が期待と食い違います。

利益を優先するのか、シェアを優先するのか。短期の成果か、中期の基盤づくりか。この基準がずれていると、現場は良かれと思って逆方向に進みます。

100日プランの中で、キーパーソンとの対話に時間を割くのは、この基準を共有するためです。

ロールアップでは特に重要になります

複数社を順次買収していく場合、この設計がそのまま成長の速度を決めます。

1社ごとに本社が深く関与する形では、買収できる数に限界があります。任せられる経営者を確保し、統治の枠組みだけを標準化します。これができて初めて、社数を増やせます。

だからこそ当社では、M&Aでexitした経営者の再雇用を重視しています。会社を売った経験のある人は、買われた側の心情も、経営の難しさも理解しているためです。

支援の場面でも同じです

外部から支援に入る場合も、構図は同じです。

当社は現場に入って実行までご一緒しますが、事業の意思決定そのものを代わって行うことはありません。判断の材料を揃え、選択肢を示し、決めるのは経営者です。

バリューアップ支援では、この距離感を大切にしています。

この記事に出てくる用語

関連するスキーム

グループ経営ガバナンス子会社管理

本コラムは一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際のご判断にあたっては、専門家にご相談ください。

前の記事次の記事

この記事に関連する資料(無償・PDF)

M&A検討の進め方ガイド

売るかどうかを決める前に、知っておきたいこと。

資料を受け取る

あわせて読みたい

コラムの一覧に戻る

まずはお話をお聞かせください。

事業の承継、成長のための買収、業績の立て直し。どの段階のご相談でも承っております。検討を始めたばかりで、何から手をつけるべきか分からないという段階でも構いません。

初回のご相談は無償です。いただいた情報は秘密保持を徹底のうえ取り扱います。

相談してみる企業価値を試算する