経営者の方から、「M&Aの会社から手紙が届いたのですが、どう受け止めればよいでしょうか」というご相談をいただくことがあります。
封筒には親展とあり、「貴社の事業に関心を持つ企業がございます」と書かれている。驚かれるのも無理はありません。この記事では、こうした手紙の読み方と、返事をする前に確かめたい点を整理します。
なぜ手紙が届くのか
手紙の多くは、M&Aの支援機関が、譲渡を検討する可能性のある会社に向けてお送りしているものです。業種、地域、規模などの条件で対象を選び、まとめて発送している場合も少なくありません。
届いたからといって、会社の経営に問題があると見られているわけではありません。多くの場合、公開されている情報や、信用調査会社のデータベースなどをもとに送られています。
「関心を持つ企業がある」は、本当か
手紙によって事情は異なります。
- 具体的な買い手から依頼を受けている場合:買い手が業種や地域を指定し、支援機関が候補となる会社に連絡している
- 広くご案内している場合:特定の買い手が決まっているわけではなく、譲渡を検討する会社を探している
どちらであるかは、文面だけでは判断できません。お問い合わせの際に、「その企業は、当社を具体的に指名しているのでしょうか」「どのような業種で、どのくらいの規模の企業でしょうか」とお尋ねになると、様子が分かります。
返事をする前に確かめたい5つのこと
① 送り主は、登録された支援機関か
中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録されているかどうかは、公表されているデータベースで確認できます。登録された機関は、中小M&Aガイドラインの遵守を宣言しています。
② どの立場で関わるのか
譲渡側と譲受側の双方と契約する仲介なのか、一方の側に立つFAなのか。立場によって、助言の性質が変わります。
③ 報酬はいつ、いくら発生するのか
着手金、中間金、月額報酬の有無。成功報酬の料率と、料率を掛ける基準となる金額。最低報酬額。面談の段階で費用が発生することは通常ありませんが、契約の前に書面で確かめておきたい項目です。
④ 契約の条件
ほかの会社に相談できなくなる専任の定めがあるか。契約期間と、途中で解約できる条件。契約が終わった後も報酬が発生するテール条項の期間と範囲。
⑤ 情報はどう扱われるのか
決算書などをお渡しする前に、秘密保持契約を結びます。どの段階で、どの範囲の相手に、社名が伝わるのかも確かめておくと安心です。
面談をしても、決める必要はありません
お話を聞いてみること自体は、悪いことではありません。自社がどのように見られているのか、どのような相手先が考えられるのかを知る機会になります。
ただし、その場で契約を結ぶ必要はありません。複数の支援機関の話を聞いて比べること、契約書の内容について別の専門家に意見を求めることは、中小M&Aガイドラインでも勧められています。
「いまは考えていない」とお答えになっても、差し支えありません。関心がない場合は、返事をせずにおくことも一つの対応です。
まず、自社の状況を知るところから
手紙をきっかけに、「実際のところ、うちの会社はどう評価されるのだろうか」と考え始める方もいらっしゃいます。
譲渡を決める前の段階でも、会社の価値の目安、考えられる相手先、価値を高める余地を知っておくことには意味があります。当社では、企業価値の簡易算定と、決める前の段階でのご相談を承っています。なお、当社はこの種の手紙をお送りしていません。届いた手紙の内容について、ご意見をお求めいただくことも可能です。
