M&Aの業務は、一人の担当者が最初から最後まで抱えがちです。そのことが、案件数の上限を作っています。
当社では業務を8つのフェーズに分解していますが、この分解には、AIを組み込む箇所を特定しやすくなるという副次的な効果があります。
AIで短縮できる工程
リサーチとロングリストの作成
業界構造の把握、候補企業の抽出、公開情報の整理。従来は数日かかっていた作業が、大幅に短縮できます。
ただし、出力された企業リストの妥当性は人が確認する必要があります。存在しない企業や、すでに買収済みの企業が混ざることがあります。
資料のドラフト作成
企業概要書の構成案、業界分析のたたき台、提案資料の下書き。ゼロから書くより、たたき台を修正するほうが速く、品質も安定します。
契約書の確認
長大な契約書から、チェンジオブコントロール条項や競業避止義務の記載を探す作業。網羅的に探す作業では、人が目視するより速く、見落としを減らす助けになります。
ただし、最終的な法的判断は弁護士が行います。AIの出力は、確認すべき箇所を絞り込むための道具です。
デューデリジェンス資料の整理
数百件におよぶ資料の分類、目次の作成、論点の抽出。ここは効果が大きい領域です。
人が担う工程
一方、代替できない領域も明確です。
価格の判断:算定手法は計算できますが、「この案件でいくらなら成立するか」という判断は、相場観と交渉の見立てによるものです。
相手の意図の読み取り:トップ会談で経営者が何を大切にしているか。言葉にされない部分を汲み取ることは、人にしかできません。
交渉:どこで譲り、どこで押すか。そのタイミングの判断です。
責任を伴う意思決定:受託するかどうか、進めるかどうか。誰かが責任を持って決める必要があります。
AIで短縮できる工程と、人が担う工程
- リサーチAIで短縮。企業リストの妥当性は人が確認します
- 資料のドラフトAIでたたき台を作り、人が修正します
- 契約書の確認AIで確認箇所を絞り込み、法的判断は弁護士が行います
- DD資料の整理分類・目次・論点の抽出。AIの効果が大きい領域です
- 価格の判断人が担う。相場観と交渉の見立てによる判断です
- 交渉・意思決定人が担う。相手の意図を汲み取り、責任を持って決めます
使い方の設計が要点です
AIを使えば時間が浮きますが、浮いた時間を何に使うかを決めていないと、単に楽になるだけで終わります。
当社では、浮いた時間を候補先への打診と経営者との対話に充てる設計にしています。案件を前に進めるのは、結局のところ人と人のやり取りだからです。
支援先へも還元します
自社の業務で試した仕組みは、支援先企業のバリューアップにも応用できます。
業務を分解し、時間のかかっている工程を特定し、代替できる部分から着手します。この手順自体は、M&Aでも他業種でも変わりません。
当社の組織設計については採用情報のページでも触れています。
